Floccinaucinihilipilification

フロクシノーシナイヒリピリフィケイション

科学とは? "実空間と情報空間をつなぐもの"

1.科学とは? 実空間と情報空間をつなぐもの

 ある教授がある日の授業で科学とそれを扱う科学者についてこんなことを言っていた。教授曰く、「僕ら科学者がやっていることは、実空間を情報空間に書き換える作業といっても過言じゃない」。科学といっても自然科学(物理学、化学、生物学等)、人文科学(哲学、心理学)、社会科学(社会学、政治学、歴史学)と様な学問分野を指すが、ここで言う科学は自然科学をイメージして頂きたい。授業はその後、実空間と情報空間についての話へと続く。実空間とは実際に僕たちが生きている空間のこと。地球が自転しながら太陽の周りを公転したり、風が吹いたり雨が降ったり雷が鳴ったり、物が落ちたり、壊れたり。対して情報空間とは、人間によって生み出された記号により作られた空間のこと。映画マトリックスを見た人は無数の記号が画面を覆い尽くすあのイメージ、あの記号たちによって再現される空間が情報空間(仮想空間とも呼ばれる)である。実空間もある法則と、その法則の組み合わせにより構成されているものだと考えれば、その実空間を支配する法則のひとつひとつを記号化し、それら記号化された法則を組み合わせることで実空間を情報空間として再現することができると言える。

 

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   記号によりあたかも実空間のように再現される情報空間、映画"MATRIX"の世界

 

 科学とはつまり"実空間を情報空間へと記号化する試みである"と言えるかもしれない。人が実空間に見出した法則を記号化する際、曖昧さや不正確さをなるべく排除するため、人間が生み出した記号の中で最も無機的で論理に厳格な記号"数学"が使用される。例えば、物体の運動という実空間の現象(実現象)の中に、運動量が保存されているという法則を人は見出し、その法則を運動量保存則(mv=m'v')として数式により記述した。対象が気体であれば気体の状態方程式(PV=nRT)や、流体であればナビエ・ストークス方程式など、自然科学における様々な実現象を人は数学により記号化してきた。現象を支配する法則を一度記号化できれば、その法則を数学的に正しく組み合わせることで情報空間として再現することができる。コンピュータシュミレーションというのはまさに記号化された情報空間による実空間の再現そのもの。例えば、コンピュータによる流体解析CFD(Computational Fluid Dynamics)では、光や音や熱や空気の流れといった物理現象の記号化された法則が、コンピュータを用いて高速に反復計算されることで物理現象が情報空間として再現される。もし科学者たちによって、世界のあらゆる現象が記号化されれば、実空間と何ら変わりのない情報空間を創造することができるかもしれない。